無限大Anantaに限らず、ゲーム業界で特に中国タイトルに関わっているとよく耳にする「版号」。
これに関連して「版号取得後1年以内にリリースしなければならない」という噂について、たびたび間違った理解をされることがあるため、重い腰を上げてかいつまんで解説していきます。
中国のゲーム規制に関する歴史
結論から言うと「明文化されていないが、版号取得後約1年以内にリリース出来ない場合は理由を説明する必要がある」というのが正確です。
中国のゲーム規制は20年以上前から行われており、当時は主に海外製品に対して「海外の有害な文化や思想の流入を防ぐ」という目的で行われていました。
(当時は自国産業の保護・育成という側面もあり、この時は国内タイトルは届出だけで済んでいました。)
きっかけは、2004年に中国共産党中央委員会および国務院が発行した文書「中国共産党中央委員会及び国務院による未成年者の思想道徳教育のさらなる強化及び改善に関する意見 (中共中央国务院关于进一步加强和改进未成年人思想道德建设的若干意见)」で未成年者の愛国主義や社会主義道徳を育てるための国家戦略が定められたことです。
いわゆる「中央8号文件」と呼ばれるこの通知は、ゲームに限定したものではなく学校教育、家庭環境、出版物、テレビなど社会全体を対象としたもので、多くの規制の発端となった文章です。
これを受けて、2004年に文化部から「文化部によるオンラインゲーム製品の内容審査作業の強化に関する通知 (文化部关于加强网络游戏产品内容审查工作的通知)」が公布され、ゲーム規制について定められました。
今回の「版号1年ルール」に相当する部分は、この文化部による通知の第八項で以下のように定められています。
承認日から1年以内に国内で製品が運用、普及、または流通されない場合、輸入事業者は文化部に報告し、その理由を説明しなければならない。文化部が輸入の中止を決定した場合、輸入承認番号を取り消すものとする。
(自批准之日起一年内未在国内运营、传播和流通的,进口单位应当报文化部备案并说明原因;决定终止进口的,文化部撤销其进口批准文号。)
当時海外タイトルを中国国内でリリースするためには、国家新聞出版署の版号のほかに文化部がゲームの内容、グラフィック、音楽、ストーリー、文化的価値、社会的影響などを含めてゲームを評価およびテストし、承認を得る必要がありました。
これらの審査内容や承認プロセスは現在の中国国内タイトルの承認プロセスにもつながる検閲・管理体制の土台となっています。
よくこの版号1年ルールは「23年に草案として出されたもので後に撤回された」とする言説が流布されていますが、20年前の2004年から海外タイトルに対してこのような規制が行われていたのです。
国産ゲームの規制導入から現在の版号
海外ゲームに対する規制から始まった中国でのゲーム規制。
中国国内のゲームに対して現在のような「事前の版号取得審査」が厳格に義務付けられるようになったのは2009年からです。
「国務院の「三定規定」および中央編弁の関連解釈を貫徹徹底し、ネットワークゲームの事前審査および輸入ネットワークゲームの審査管理をさらに強化することに関する通知(关于贯彻落实国务院<“三定”规定>和中央编办有关解释,进一步加强网络游戏前置审批和进口网络游戏审批管理的通知)」で、国内のPC・オンラインゲームに対しても、海外タイトル同様に厳しい審査が課せられるようになりました。
また、2016年には「モバイルゲーム出版サービス管理に関する通知(关于移动游戏出版服务管理的通知)」で、規制の抜け穴になっていたモバイルゲームについても版号の取得が義務化されました。

その後、中国国内で組織の変革が行われたことで2019年頃からゲームの承認・審査は国家新聞出版署に一本化され、文化部はゲーム審査に関わらなくなったため、先述の1年ルールが記載された「文化部によるオンラインゲーム製品の内容審査作業の強化に関する通知」はリンク先にもある通り「インターネット文化事業許可の承認範囲の調整及び承認手続きの更なる規制に関する通知 (关于调整《网络文化经营许可证》审批范围 进一步规范审批工作的通知)」により2019年5月14日に自動的に無効になりました。
しかしながら、承認が一本化された際に文化部から公布された通知が無効になったということであり、実務的には運用・承認プロセスはそのままの形で残っているため、「明文化されていないが、版号取得後約1年以内にリリース出来ない場合は理由を説明する必要がある」というのが現在の正確な運用状況となっています。
なお、よくある誤解ですが版号に期限はありません。
サービス開始後毎年版号を更新するといったことは必要なく、サービスが続く限り有効です。
しかし、版号取得後長期にわたってサービスを開始しないといった場合や、ゲームがサービス終了した場合は版号が取り消されます。
なので現在は国内タイトルであっても、版号取得から長期間経ってもリリース出来ない場合は理由を説明する必要があるのです。
版号はいわば中国国内でゲームをリリースするための貴重な権利であり、転用されたり中身を変えてリリースされることを防ぐため、取得後も厳しく管理されるという訳です。
中国国内のことな上に明文化されていない歴史的な流れを経ての実務的な要件であり、AIやネットの情報には誤解が多いため書いてみました。
まとめると、
・中国でのゲーム出版には版号が必要
・版号の転用やゲーム内容の勝手な変更を防ぐため厳しく管理されている
・そのため版号取得から長期間リリースされない場合は理由を説明しなければ取り消される
・長期間の目安はだいたい1年
ということです。
個人的には、無限大AnantaはNTEよりも攻めた表現が多く、GTAのような日本でも規制されかねないレベルの表現は国家新聞出版署とのすり合わせも大変そうだなと思っています。

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